商品計画・スケッチパース
Q&A
ホテル・旅館、温泉施設の建築をご検討中の方には、さまざまな疑問や不安があるのではないでしょうか。ここでは、当事務所にご相談が寄せられたよくあるご質問を紹介し、Q&A形式で回答します。
マテリアル集
マテリアル集
陰影の演出
自然の風で陰影の演出
外部では、行灯などの器具による照明方法もあるが、外部であることを生かし、風にそよぐ木々の梢をシルエットで積極的に映し出したり、水面の揺らぎを生かすなど自然の動きで飽きさせない方法もある。
ヒントとサンプル
①外壁面をスクリーンに見立てて陰影の演出をした事例(図1、図2)
②水面の自然の揺らぎを利用し、照明を映し出した演出事例(図3)
暖炉デザイン集①
提案暖炉集① -外暖炉-
暖炉デザイン集②
提案暖炉集② -内暖炉-
アイデアデザイン集 -手描きスケッチ編-
提案手描きスケッチ集
手書きスケッチ一覧(.pdf)
アイデアデザイン集 -手描きスケッチ編②-
提案手描きスケッチ集②
手書きスケッチ一覧②(.pdf)
アイデアデザイン集 -スパ&エステ-
提案スパ&エステパース集
スパ&エステパース一覧(.pdf)
アイデアデザイン集 -ロビーラウンジ-
提案ロビーラウンジパース集
ロビーラウンジパース一覧(.pdf)
アイデアデザイン集 -外観・鳥瞰-
提案外観・鳥瞰パース集
提案外観・鳥瞰パース一覧(.pdf)
アイデアデザイン集 -レストラン-
提案レストランパース集
提案レストランパース一覧(.pdf)
アイデアデザイン集 -客室-
提案客室パース集
提案客室パース一覧(.pdf)
活気ある施設をつくるノウハウ
人が集う仕掛けをつくる
ヒントとサンプル
①ロビーで地元音楽家の演奏会などができるよう、余白のある家具配置をする。(図1)
②炎の揺らめきをみると人は近くに寄って眺めてみたくなります。テラスに暖炉を設けると肌寒い日でも外に脚を運びたくなります。(図2)
③山の澄んだ空を眺める星見の会でなどイベントのできるデッキテラスをつくりました。(図3)
視線の調整で、見える景色を変化させる
視線を楽しむ、しつらえのノウハウ
限られたスペースでも、様々な景色に見せるテクニックがあります。
ヒントとサンプル
①斜めのガラス格子等によって、見る角度により、違う景色が広がります。(図1~4)
視線を見せたい方向へ向けるテクニック
視覚の特性を生かし、見せたい景色を強く印象付ける
流れを追う視覚特性を生かし、景色の方向へ意識を向かわせるデザイン手法もあります。
ヒントとサンプル
①景色を見せたいときなど、開口を広げることはもちろん有効ですが、視線が景色方向に向かうように、目地や模様の流れをデザインすると効果的です。(図1)
ガラスを通して見える、夜景の留意点
外部が暗い場合に、ガラスが鏡のようにならないアイデア
外に比べ内部が明るいと、ガラスが鏡ようになってしまい、せっかくの庭や景色が何も見えなくなってしまいます。
ヒントとサンプル
①スポットライト等で庭木などをライトアップすると効果的です。(図1)
②部屋内を暗めにするのも効果的で良いでしょう。
姿見鏡のライティングテクニック
鏡に映る顔や姿を、きれいに照らすライティング
顔の正面を照らす計画をしないと、天井からの光で顔に影ができてしまいます。
ダウンライトの場合、特に注意が必要です。
ヒントとサンプル
①鏡の裏に間接照明を仕込むと良いでしょう。(図1~図3)
②照明を顔が正対する位置に設けた例です。(図4)
③拡散型ダウンライトを使用する方法もあります。
足湯の魅力をアップさせる工夫はないか?
足湯に浸かりながら景色を楽しむ
足湯に浸かり、水盤越しに景色を楽しみながらドリンクを飲めるカウンターにした事例があります。(図1)
ヒントとサンプル
①足湯だけではなく、水盤や飲食可能なカウンターなど他の要素を組み込んで魅力あるものにしました。
②足湯には温泉を入れ、底面に玉石を埋め込み、足裏マッサージも出来るようにしました。(図3)
③座るところは床面より上げた台座の上に座椅子を置き、座り易くしました。(図2)
水面の広がりを感じさせる見せ方
水の豊かさ、広がり感を出す
水盤やお風呂も、縁の見せ方次第で広がり感を出すことができます。
ヒントとサンプル
①水面の立ち上がりの厚さ分をも水面に見せるため、天端は斜めにして広がり感を出します。(図3)
②オーバーフロー側の立ち上がりは視線に入らないように縁よりも下げるようにしましょう。(図3)
③縁の色は黒御影のように黒色にすると水面を通しても目立ちません。(図4)
④技術的なこととして、石の目地からの漏水を極力軽減するためには、防水層立ち上がりレベルを水面に近づけることで、シール目地への水圧を軽減させる様な納まりを工夫しましょう。事例では、石をL字に工場接着したものに2次防水を一体化させて対応しました。(図4)
可動建具による空間演出
可動建具により、空間演出を変化させる
建具を可動式にすることで、簡単に空間の雰囲気を変化させることができます。
ヒントとサンプル
①会場の中心にあるビュッフェコートを切り替え式の可動建具にし、ライティングに変化を与えます。(図1~2)
②朝食時のさわやかさの演出と夕食時のムード演出の事例。(図2~3)
間接照明による広がりの演出
間接照明により、明るさと広がりを得る
巾の狭い廊下や客室にただ照明を配置すると、薄暗さや狭さが際立つ場合があります。
ヒントとサンプル
①薄暗く狭さの際立つ客室を、間接照明による広がりの演出で改善した事例。(図1~2)
②巾の狭い廊下を、少しでも広く見せるために、リズミカルに間接照明を設置。(図3)
露天風呂の目隠し対策②
アルミルーバーを上部から吊ることで、開放感を得る
旅館などに露天風呂をつくる場合、高層棟などからの目線をどのように切るかが問題になってきます。壁から片持ちで、アルミルーバーを吊ることで、柱なしの目隠しを実現できます。
ヒントとサンプル
①上部からの目線は防ぐが、風・光は通すアルミのルーバーを新設した事例では、ルーバーの下でも、十分植栽も育ち、且つ開放的な露天風呂が完成しています。(図1)
エントランスの雰囲気を変える
既存の建物の外装を改修することなしに雰囲気を変える
外観のイメージを変えるため、外装を改修すると、かなりのコストがかかります。その代わりに建物の前にスクリーンを新設すると、効果的に外観のイメージを変えられます。
ヒントとサンプル
①改装前の建物の外観。(図1)
②既存エントランスキャノピーの前には、アルミ格子を入れたスクリーンを新設して、スクリーンの前には、スクリーンの存在感を消すように植栽を配置します。これにより、既存の外装に手を加えることなく、エントランスの雰囲気を一新できることが期待できます。(図2)
大理石の耐久性について
大理石は酸に弱いので、酸性のものを使用する場所へは避ける
大理石の天板に酸性のもの(洗剤・オレンジジュース・酢・ドレッシング)などをこぼすと、石の表面に、輪シミが発生して、部分的に艶がなくなる場合があります。(図1)
ヒントとサンプル
①酸性のものを使う場所では、大理石の使用を避け、酸に耐久力のある、「御影石系の材料」や、「樹脂系の材料」を使用するように心がけましょう。
露天風呂の目隠し対策
外部からの視線を遮り、景色は見せるテクニック
露天風呂を他人の視線から隠そうとして単純に囲ってしまうと、せっかくの景色が台無しになってしまいます。
ヒントとサンプル
①目隠し板を跳ね出し、視線の遮蔽と共に、縁へ寄れないように工夫しましょう。(図1~3)
②ガゼボなど、目隠し自体を面白くデザイン。(図4)
③景色側を深くし(深湯)、上半身が隠れるようにしましょう。
ポイント
配置計画時に最小限の遮蔽ですむよう、現地確認を十分に行なってください。
又、落葉などよる見え方の違いにも配慮する必要があります。
不易商品と流行商品とは何ですか?
今までホテル・旅館は10年から20年という長い期間をかけてゆっくり投資回収をする、どちらかと言えば「不易な商品」でした。また主たるお客様であった社用や接待の男性中心のお客様もあまり流行には関心が無く、いわゆるホテル・旅館らしい商品であれば特に問題はありませんでした。
しかし個人の女性やカップルが増えてくれば、好むと好まざるとに関わらず、お客様のニーズをにあわせた「流行商品」も取り入れざるを得ません。
女性は感性が鋭くその時々の流行に敏感に反応して、「雰囲気を消費」します。金銭感覚は男性よりも細かく、自分にとって快適だと思うコトやモノには金を惜しみませんが、流行と同様にとても移り気です。
女性を対象にしたファッションもレストランもその商品寿命は短いので、東京で流行りのおしゃれなレストランも数年経つと流行らなくなる処も多いようです。
女性相手のブライダル施設も流行の移り変わりが激しく、商品寿命が短いため施設商品というよりも、もはやファッション商品と言っても過言ではありません。
流行の女性向け商品は、ホテル・旅館の魅力を増すためには必要ではありますが、商品の陳腐化も早いので重装備にしないほうが賢明です。そのような「雰囲気商品」は、内装や建築的にお金を掛けなくても家具、装飾、花、ライティング等の設えや広告宣伝等で演出する事が十分に可能だからです。
そうはいっても、不易商品を磨くのには時間もお金も掛かるとなれば、当面の厳しい経営環境から考えると、お客さまに訴えて宿泊売上がすぐに増える、即効性のある流行商品から投資するという戦術を取らざるを得ないのかも知れません。
不易流行とは何ですか?
不易流行とは松尾芭蕉の俳句理念の一つですが、不易(変わらないもの)を踏まえて不断に流行(変わるもの)を追いかけよ、変わり続けることが重要である、と説いています。
ホテル・旅館の商品計画においてもその2つのバランスが大切です。
不動産収益の最大化とは何ですか?
旅館業を宿泊業+飲食業+温浴業+物販業を兼ね備えた不動産業と考えれば、それぞれの部門別収益を最大化すれば良いことになります。
旅館の収益性を最大化する優先順位は、色々な考え方があると思うが、弊社では現時点では下記の順番と考えています。
Ⅰ 飲食部門
Ⅱ 宿泊部門
Ⅲ その他部門
Ⅳ 温浴部門
限られた金額を投資する以上は、費用対効果の高い順に投資することになります。
然しながら、旅館商品は1に述べたようにハードとソフトの複合商品であり、単にハードだけでもソフトだけでも魅力ある商品にはなりません。
商品仕入投資はその旅館としての戦略商品を如何に仕入れるか、という再生投資の要ですが、その旅館の商品をどのように考えるかが最も重要な事であり将来展望を考えながら設備投資することが大切です。
「攻めつつ守る」方法とは何ですか?
戦いにおいて攻めと守りは何れも大切ですが、再生投資においては、攻め(商品仕入れ投資)が先で守り(修繕維持投資)は後に考えることがポイントです。
再生投資では、まずは新たな収益を生むものが先であり宿泊単価増、稼働率増、売店、飲食単価増等が見込める商品仕入れを最大限行い、その次に最低限の修繕維持投資を行います。
然しながら、むやみに攻めるだけでは施設が維持出来なくなるので、当面は最低限の修繕維持投資を行いながら、3~5年後に必ず必要になる修繕維持投資金額も中期再生計画の中で担保しておくことがポイントです。
効率化投資とは何ですか?
改修・再生投資で一番即効性が高く、有効なのは「効率化投資」だと思います。
効率化投資というのは、旅館商品の生産性を向上させるための投資で、これには施設の効率化とサービスの効率化の2つがありますが、ここでは施設の効率化投資を考えてみたいと思います。
色々な業者から売り込みのある、いわゆる省エネ機器にはデータ等に信憑性が少なく試算方法が楽観的であったりして、意外に投資回収に時間のかかるものも多いようです。
弊社では省エネ機器を導入する場合には、3~4年以内に投資回収できる様にお薦めしています。
省エネの試算は限られたデータの下で、机上試算するものであり多少の誤差は当然あると考えるべきですが、3~4年回収なら誤差が2~3割あっても5年以内には確実に投資回収できるので、機器の寿命を10年としてもあと5~6年は省エネ効果を享受出来るからです。
しかし専門の省エネ機器を使わなくても、設備機器等は10年も経てば機器のエネルギー効率も良くなり、新しい設備システムも開発されるので、単純に考えて評価の高い最新省エネタイプの機器に更新すれば、目先の省エネ機器を導入するよりも効果的なケースが殆どです。
要は設備機器の経過年数と新規導入のコストをランニングコストで秤に掛けて、何時どのように更新すれば一番ライフサイクルコストが安くなるかを比較検討すれば良いのです。
従って概ね15年毎にやって来る施設の設備更新時期は、施設効率化投資の最大のチャンスでありこの時期に設備のシステムを検討して、その時代で最も有利なシステムに更新することが、一番単純で効果の高い施設効率化の方法といえます。
その際光熱費ばかりでなくメンテナンスの費用も合わせて検討し、トータルのライフサイクルコストが安いシステムにする事が前述したLCCを最小化する近道です。
FM(ファシリティマネジメント)をホテル・旅館に活用出来ますか?
ホテル・旅館の場合は、その建物の中に、宿泊施設や飲食施設、会議室、レジャー施設、更には温浴施設まではいる複合施設であり、また各施設ごとにライフサイクルや管理方法も異なるので、全ての設備を常に適切に管理する事は、なかなか容易ではありません。
大型の都市ホテルや公的宿泊施設等では、社内に施設管理課を設けて、それなりのホテルとしてのFMを行っている処もありますが、旅館では施設管理の専任者がいないことも多く、少ない人員で日常の施設管理に追われるのが実情であり、とてもマネージメントと言う状況にはありません。
しかし、この様な状況下でも時間の経過と共に施設は確実に劣化し、新しい競合相手が次々と現れて自社の経営を脅かします。
それらの外的な脅威に対しては、旅館の最大の商品である「施設」を常に磨き、維持し、魅力ある商品を仕入れ続けなければ、勝ち残る事は出来ません。FM手法をホテル・旅館に活用することは今後益々必要になると思われます。
その為には、既存施設を上手に管理し、活用しながら新商品を作っていくホテル・旅館の為のファシリティーマネージメント方法が必要なのだと思います。
ファシリティーマネージメントの効能は何ですか?
経営者が期待できるFMの目的、効果は次の4点に要約されます。
① コストミニマム(設備投資、運営費の最小化)
② エフェクトマキシマム(効用の最大化)
③ フレキシビリティー(将来の発展、変化への柔軟な対応)
④ 社会、環境対応(ファシリティーマネージメントブック(日刊工業新聞社刊)より)
FMの対象は現在オフィスが最も多く、成果も著しい様です。オフィスビルは、事務所、会議室などの比較的単純な機能の施設で、各施設の寿命(ライフサイクル)も大体おなじです。従って、施設の管理や効率化もやり易く、FM向きであると言えます。
ファシリティーマネージメントとは何ですか?
経営資源とは、今まで一般的に3つのMとされてきました。すなわち人(Man)、物(Material)、金(Money)ですが、近年は「情報」を加え4つとしていますが、これに「施設」を加えて、「人、物、金、情報、施設」の5つを経営資源として考え、活用しようというのが、ファシリティーマネージメントの考え方です。
ファシリティーマネージメント(以下FMという)は、直訳すれば、施設経営と言う事でしょうが、ファシリティー(施設)を切り口とした新しい経営管理手法で、1979年頃に、アメリカでオフィスビルの施設管理の手法として開発されました。
FMの目的は一言でいうと「全経営固定資産のあり方の最適化」であり、全ての所有施設が、最小の投資と最小の施設運営費で、最も効率よく機能するようになる事を目指しています。
LCCシミュレーションとは何ですか?
このLCCは、施設の規模、仕様、設備システム等を専門的に調査把握する事によって、ある程度予測する事が可能です。
これをLCCシミュレーションと言います。15~20年位のLCCミュミレーションを行う事によって、その間に掛かる維持管理、修繕更新工事の費用が把握出来るため、中長期の設備投資対策が立てやすくなります。
このシミュレーションによって、施設の大規模修繕が概ね15年毎に発生する事が理解でき、その費用の概算も解るので、工事費用の調達も検討できますし、それに合わせて商品力強化の方法を考える事が出来ます。
現在マンション等では資産価値を維持する為に、およそ10年毎に大規模修繕を行います。その為に毎月修繕費用を積み立てて、資金を確保しています。
今後ホテル・旅館でもこのような考えが一般的になると考えられますが、ホテル・旅館の場合には修繕費として積み立てる方法は難しいのですが、ライフサイクルを予測しながら毎年の保守、修繕工事を計画的に行う事で、修繕更新費用を平準化することは十分可能であり、大規模修繕によって経営が圧迫されないようにする為にも、このLCCシミュレーションを行う事が今後は必要になると思われます。
弊社では、施設DDに基づいて、向こう15年のライフサイクルコストの算出を行い、必要費用をグラフ化したLCCシミュレーショングラフを作成して、改修・再生計画上のインフラ投資の基礎を作ることにしているが、視覚的にも将来掛かるであろう建物の修繕維持投資金額が「見える化」出来るので経営者やコンサルタントにも好評です。
むしろLCCシミュレーションが無ければ、再生投資を段階的に行いながら事業再生させることは非常に難しいと感じています。
ライフサイクルコスト(LCC)とは何ですか?
施設が建築されてから壊されるまでに掛かる費用の総額をライフサイクルコスト(以下LCCという)と言いますが、建物の生涯費用とでも考えて下さい。
この建物の生涯費用には建築する時の建設費や設計料等の他に光熱費、保守管理費、修繕費、解体費用等が含まれますが、その中で建築費はわずか20%未満に過ぎません。そのコストの大半は、光熱費や保守管理費、修繕費という運営費用なのです。
従ってこの運営費用を如何に安く出来るかが建築後の施設の修繕・維持コスト削減のポイントとなります。
省エネ診断とは何ですか?
弊社では今まで設備投資をお手伝いした全国のホテル・旅館の光熱費調査を毎年実施しており、一人当たり光熱費や面積当たり光熱費のデータを算出し、それを基に各施設で省エネ検討が出来るような情報を顧客に提供しています。
そのデータベースと比較する形で対象旅館の光熱費分析を行い、光熱費の削減余地を推定しながら省エネの検討を行い設備投資に反映させます。
リスク診断とは何ですか?
まずは当社なりの方法でリスク診断を行い、そのリスクの程度と回避方法を探ります。
ホテル・旅館商品には、その商品特性から避けることの出来ない7つのリスクがあります。それは、
① 地震によるリスク
② 火災によるリスク
③ 法的不適合のリスク(建築基準法消防法等)
④ 安全管理上のリスク(事故、犯罪、等)
⑤ 施設トラブルによる営業停止リスク(漏水、給水、空調トラブル等)
⑥ 衛生上のリスク(食中毒、レジオネラ菌等)
⑦ 将来の修繕更新費増大のリスク等です。
更に旅館商品としては、次代に合わせた商品にしないと顧客から支持されないという陳腐化リスク(社会的陳腐化・商品的陳腐化)等もあり、それらの運営上、営業上の様々なリスクを診断して、リスク対策を改修・再生投資の中に上手く取り込んで上手にリスク回避する方法を探ることがとても重要になります。
ホテル・旅館の施設診断のポイントは何ですか?
ホテル・旅館再生に必要とされるのは、通常のマンション等で行われる施設DDのような「資産価値を維持するための建物詳細調査と再調達価格の算出」ではなく「利益の出る旅館に再生するための実践的施設DDと商品DD」です。
再生投資は時間との勝負なので、通常は期間と費用もあまり掛けられないため現地訪問前に図面等で状況を把握しておき、現地では目視とヒアリングを中心として、施設運営者と施設管理担当者等へのヒアリングを含め2日間程度の短期間で行うことになります。一般的に不動産としての施設DDを正確に行うには、建物中性化試験、配管のサンプリング診断、耐震診断等の詳細調査が必要ですが、旅館再生計画の策定上は時間的な制約もあるので当面は無くても支障はありません。
これらの詳細診断は再生が可能となり、実施計画を策定する中で必要に応じて行えば十分であると考えます。
施設診断の手順はどのようになりますか?
通常、施設診断書は下記の手順で作成します。
ホテル・旅館においても、特に旅館では、施設インフラを施設資産としてマネージメントする意識が希薄なため、施設管理体制は極めてルーズな場合が多いようです。
また確認申請や検査済証等の公的書類や竣工図面等も散逸していることが多く、特に再生案件ではかなり杜撰なケースが多いので、まずはこれを整理して現況を把握することが必須です。
はじめに建物の経歴書とでもいう「施設台帳の作成」を行います。
まず現存する書類等とヒアリングによって、出来るだけ正確な建物履歴(建築年度、改修年度、確認申請等公的書類の有無等)を明らかにして、建物毎の耐震性能、耐久性、設備耐用年数等を推定します。
その後、現地にて建築、設備の「現況診断」を行い、建築性能、設備性能(給排水、空調、電気)、耐震性等の劣化程度を診断して、施設インフラの改善方法と改善費用の算出を行います。
施設診断とは何ですか?
旅館再生で最初に必要なのは、施設デューデリジェンス(以下施設DDという)です。
再生案件では、ビジネスデューデリジェンス(以下ビジネスDDという)と同時に行われることが多いのですが、ホテル・旅館の場合には前述したように施設そのものが商品なので、一般のビルやマンションのような単なる施設DDだけでは不十分です。
一般的に施設DDは、建築業者や設備業者がハードの状況を調査診断して再調達価格を算出することを意味しますが、それだけでは旅館の再生計画立案には役に立たないケースが殆どです。
再生計画の立案には、施設の修繕維持状況の把握と共に、再生計画と一体となったホテル・旅館商品の再生提案を短期間に策定する事が要求されます。
施設商品として旅館を再生させる為には、旅館商品としての商品性のデューデリジェンス(商品DD)が必ず必要なのであり、むしろ商品DDを行うための基本調査として施設DDが必要になると考えています。
従って、弊社では施設DDと商品DDを合わせて行い、単なる不動産の施設DDと区別するために、これをホテル・旅館の『施設診断』と呼んでいます。
弊社の「施設診断」では建築、設備の設計技術者と商品企画の熟練者が協力して「施設商品としての旅館」を一体的に診断し、ハードの問題点と改善方法、運営ソフトの問題点と改善方法、今後の商品計画の方向性、等を総合的に提案するようにしています。
施設劣化に対処する方法はありますか?
施設は必ず劣化しますが、建築、設備、什器備品といった部位ごとに劣化するサイクル(寿命)は大体決まっているので、更新の時期はある程度予測できます。
その「施設劣化サイクル」を予測して準備しておき、この劣化した施設の更新じきに合わせて設備投資する方法が施設商品の特性を活かした一番効率的な設備投資の方法であり、トータルのライフサイクルコストを最小化する最も良い方法なのです。
設備更新は15~20年毎に必ずやってきますが、事前に準備している旅館は極めて少なく、トラブルが起きてから後追いで工事する為に、設備方式も最新設備を見当する余裕もなく、大急ぎで現状の設備方式のまま復旧せざるを得なくなり、2~30年も前の時代遅れのシステムをまた踏襲してしまうケースも多いようです。
これを避ける為には最低でも10~15年程度の中長期の「戦略」を立て、施設の更新のサイクルを考えながら5年以内の中短期の「戦術」を毎年検討すべきであると考えます。
何のために設備投資をするのかを考えずに目先の修繕や、故障を直すだけの投資をしていると、「設備システムの更新」という最大のリノベーションチャンスにも、「古いシステムをそのまま踏襲して再投資してしまう愚」を犯す事になってしまいます。
ホテル・旅館にとって施設が最大の商品であるならば、その特徴を十分把握して設備投資の戦略を考える事は大事な商品仕入れの基本だと思います。
「施設劣化のサイクル」とは何ですか?
施設には、必ず設備投資をしなくてはならない宿命と、そのサイクルがあります。その法則を知り、これ合わせて投資する事が設備投資の一番効率的な方法です。
しかし、一般的には、このサイクルを知らない方も多く、また法則を無視して設備投資する為に、商品仕入投資の改修後に修繕維持投資が必要になり、再投資したりして無駄な2重投資となるケースも多いようです。
そのサイクルとは施設はおよそ15~20年毎に必ず大規模な修繕投資が必要になり、5~7年ごとには小修繕が必要になるという「施設劣化のサイクル」です。
改修・再生投資のポイントは何ですか?
前述のように 改修・再生投資 = 修繕投資(守り)+商品仕入投資(攻め)
の図式となりますが、改修・再生投資ではこれをバランス良く、しかも同時に行うことが必要です。
そのポイントは、①攻めつつ守る、②不動産収益性の最大化、③商品寿命内の再投資の3つに集約されます。
戦略的改修とは何ですか?
ホテル・旅館施設は商品である以上、単に古い物を模様替えするだけでは商品としての付加価値は高まりません。
モノ余りの成熟時代は、単に旅館を作ったから改装したからお客様が来てくれるような時代ではありません。
常に時代の流れに即した設備を導入し、新しい提案をして、需要を喚起する施設商品を作ることが必要であり、古くなったから改装すると言う程度の、場当たり的な戦術ではマーケットで勝ち残る事は出来ません。
中長期的な商品づくりの展望を描き、戦略的にホテル商品の体質を変え、売れる業態に改修して行く「戦略的改修」が必要な時代だと思います。
然しながら、現在のような経営環境の中では経営を圧迫するような大型投資は中々出来ないので、基本的にキャッシュフローの中で段階的に設備投資をする事が必要になります。
その際に重要なのは、今まで述べてきたように施設のライフサイクルコストを把握して、施設寿命を見ながら中長期の戦略を持って設備投資する事です。
施設の定期的な劣化と更新を中長期戦略に明確に組み込み、修繕維持投資や設備更新投資を負担と考えずにむしろその時代に合った商品に作り変えるチャンスと前向きに捉える事が売れるホテル商品作りに繋がるのと思います。
改修・再生投資のポイントは何ですか?
ホテル・旅館業を「施設」として考えると、宿泊業、飲食業、温浴業といったビジネスを「ホテル・旅館」という施設(ハード)の中で総合的に提供する「複合型商業施設」であり、不動産業でもあるといえます。
図式的に言えば
旅館業=宿泊業+飲食業+温浴業+物販業+不動産業+ホスピタリティー
といえます。然しながら、単にハードだけ集めてもホテル・旅館にはなりません。
そこで提供される「環境」「施設」「食事」「おもてなし」などが総合的に提供され、施設(ハード)と運営(ソフト)が一体の商品となって初めて「ホテル・旅館」という商品になるのです。
要約すれば「ホテル・旅館業は生活そのものを商品化した複合商業施設」であり、「ハードとソフトが一体化した情緒商品」と言う事が出来ると思います。
従って、改修・再投資にあたって良い「ホテル・旅館商品」を作るには、施設力(ハード)とそれの運営力(ソフト)をどのように磨くかがポイントとなります。
ホテル・旅館の設備投資は施設力(ハード)と運営力(ソフト)を磨くことであり、しかもこの2つの投資を一体的に同時に行うことがポイントです。
改修・再生投資で初めに必要なことは何ですか?
新築も改装も設備投資の原則は同じですが、改修・再生投資の場合には上記2つの「修繕維持投資」「商品仕入投資」を如何にバランスよく再投資出来るかが、施設再生の一番の鍵となります。
新築と違い既存施設の経営状況によって、施設の維持管理状況は大きく異なりますが、事業不振や倒産による再生プロジェクトの場合には、施設の維持管理状況は最悪であることが殆どなので、まずは現状の施設状況を正確に把握することが非常に重要です。
改修・再生投資の優先順位は何ですか?
弊社の最近の事例から演繹すると、現時点では投資の効果から優先順位を下記のように考えると良いと思います。
① 飲食部門
② 宿泊部門
③ 温浴部門
④ その他部門(物販、スパ等)
改修・再生投資にはどのような種類がありますか?
改修・再生投資を大きく分けると、リセット型(既存施設を解体して新業態として新築するもの)とリノベーション型(既存施設を活用しながら、業態変更等を行い、ソフトとハードを更新したもの)に分かれます。
リセット型は所謂建て替えと同義であり、建て替えた事例では当然ながら、ソフトハードとも今の時代のニーズに合ったものとなります。
改修・再生投資の成功事例を分析して言えるのは、部分改修であっても成功した事例は、商品をバランスよく改善して、ソフトとハードの更新を同時に行いながら、しかも守りの修繕投資を最小化して攻めの商品仕入れ投資を最大限に行ったホテル・旅館が多いということです。
それらのホテル・旅館では初回の再生投資から2~3年程度で、初回で先延ばしした修繕維持投資を行い、施設リスクを最小化することに成功して、経営の巡航高度を上げています。
リノベーションとは何ですか?
改修に合わせて運営ソフトを見直し、磨きなおして、イノベーションを行い、ソフトとハードを一体的に更新して、新しい価値を生むような改修投資を弊社ではリノベーション投資と言っています。
単なるリフォームは修繕維持投資であり、新たな付加価値を生むものではありません。
新たな価値や収益を生んで初めて商品仕入れ投資といえます。
リフォームとリノベーションの違いとは何ですか?
リフォーム(reform)とは修繕、模様替えを意味し、古くなった施設を更新して蘇らせる事ですが、リノベーション(renovation)は更に古いシステムや設備を時代の変化に対応させて機能を高度化し、既存の建物に「付加価値」を加えて商品性を高める事を意味します。
商品改善提案の3つの方法とは何ですか?
商品改善提案書には、通常の施設DDの診断報告に当社なりのノウハウを加えて今後の商品としての改善方法を提案しますが、次の「守る」「活かす」「伸ばす」という3つの手法で、既存施設を極力活かしながら商品性を増す方向を探ることになります。
「商品仕入投資」にはどのような方法がありますか?
商品仕入投資」は「不易投資」と「流行投資」に分けて考えると理解しやすいと思います。
「不易投資」とは、施設の構造体、設備システム等のインフラ部分等で容易には変えることが出来ない部分に投資するものと、ホテル・旅館本来の基幹商品であり不易商品である「環境商品作り」や「温浴商品作り」で、投資回収に費用と時間が掛かりますが必ず必要な投資です。
「流行投資」とは内装や備品、装飾等の比較的容易に変えることが可能で、ホテル・旅館商品の魅力を維持するために時代の流行に合わせて更新する必要があり短期間に投資回収可能な投資で、インフラ投資のように必ず必要ではないが、商品の付加価値を高めてブランド価値を上げて魅力ある商品を作るための投資です。
商品寿命とは何ですか?
個人のお客様や女性が主要顧客になって来ると、投資設備をする際に今まで旅館ではあまり考えて来なかった「商品寿命」という概念を考える必要があります。
一般的なフランチャイズの飲食店においては5年以内に投資回収する事が可能です。
これは土地や建物を所有しない、いわゆる持たない経営だから可能なのであって、土地や建物を所有する旅館の設備投資では、全体の投資回収には10年から15年という長期間かかるのが通例です。またインテリアや家具は簡単に更新できるが、建物は一度建ててしまうと建て替える事は容易では無く、設備システムも休業をしないと修繕も更新も出来ません。
そのために5年後10年後をどのような旅館にして行くかという中長期ビジョンを明確に描き、簡単に入れ替えることの出来ない施設商品の特性を良く見極めて、そのビジョンの元に戦略的に設備投資をする事が一番重要なのです。
ホテル・旅館の設備投資の要諦は何ですか?
要約すれば『「商品仕入れ投資」と「修繕維持投資」を熟知して、施設としての商品性を「適切に維持」しながら最小のコストで「修繕維持投資」を行い、収益の中で最大限に「商品仕入投資」を繰り返し、常に付加価値を上げながら持続的な利益を出し続けること』がホテル・旅館の設備投資の要諦といえます。
ホテル・旅館の設備投資にはどのような方法がありますか?
ホテル・旅館の設備投資について弊社では長年の経験から下記のように考えています。
ホテル・旅館の設備投資には大きく分けて、「修繕維持投資」と「商品仕入投資」という2つの投資方法があります。
「修繕維持投資」とは施設の修繕・更新をしながら、商品力を維持するために保守、修繕、更新等を行う投資であり、施設商品としてのインフラ維持の為には必ず必要な投資といえますが、新しい価値を産まない「守りの投資」といえます。修繕維持投資は旅館の商品性を維持するために必須の投資ですが、この投資の質を常に適正に維持して商品性を保つことは実は非常に難しいことです。
修繕維持のレベルをどこに置くのかによって、投資金額がかなり変わるので支出を抑えるためにカットするのは容易ですが、商品品質が落ちるのも事実なので単に壊れたから修繕するというレベルの近視眼的な視点ではなく「ホテル・旅館商品」としての「商品品質」を、コストを抑えながら如何に高く維持するかという視点で考えるべきであると思います。
「商品仕入投資」は増収、増益の為に魅力あるホテル・旅館商品を作り、長期的継続的な利益を生み出す「攻めの投資」です。
事業の発展のためには必須の投資であり、この投資の巧拙が事業の将来を左右します。
ホテル・旅館にとって「施設」の位置づけとは何ですか?
「ホテル・旅館」の本質はホスピタリティー(おもてなしの心)といえますが、そのホスピタリティーに満ちた料理やサービスは、良く手入れされた「快適で美しい施設」の中で提供される時に、初めて大きな感動と満足をお客様に与える事が出来ます。
つまりホテル・旅館にとって「施設」はホスピタリティー(おもてなしの心)をかたちにした「最大の見える商品」と言えます。ゆえに、この「最大の見える商品」である施設を常に磨いて、魅力を維持し、お客様に繰り返し来て頂くことがホテル・旅館の「施設経営」のポイントなのです。