B.LCC(ライフサイクルコスト)シュミレーション
1.耐震診断とは
地震は自然現象であり、何時、何処で、どの位の大きさで発生するかわかりません。
その為「耐震診断」、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」等では、地震の大きさを十勝沖地震、宮城沖地震と想定しています。
耐震診断とは、上記の地震に対し建物の崩壊する状態を予想しその時の耐力と変形量で建物の
耐震性能(Is)を算出し安全性を判定しています。
平成7年1月の阪神大震災クラスの地震の場合は、被害状況のまとめによると昭和46年以前の建物、 平面的、立面的なバランスの悪い建物(耐震壁、ブレースの偏在)地盤の悪いところに建設された建物等に被害が多く、1981年以後(新耐震設計法)に設計された建物では、軽微な被害にとどまっているようです。
耐震診断では主に1981年以前の建物を対象とし安全を確認しようとするものです。
2.耐震診断の内容
事前に、建物の設計年度、図面、計算書、経年変化(亀裂、腐食等)等を調査し現状の状態をチェックします。 その後、図面、計算書より以下の内容で数値として耐震性能を計算します。
1次診断では、柱、壁、の断面積、により建物の耐力を略算し耐震性能を計算します。
2次診断では柱、壁、の断面積、配筋量より部材ごとの耐力を計算し耐震性能を計算します
3次診断では、柱、梁、壁の断面積、配筋量より部材ごとの耐力を計算し建物全体の崩壊状態を推定し耐震性能を計算します。
一般的には、2次診断まで行い耐震性を評価していることが多いようです、特殊な建物2次診断で
判断が困難なものについては、3次診断まで行われています。
3.耐震診断の結果は
(1)で述べた想定地震にたいして構造指標が計算され「危険度が大きい」「危険度が小さい」と判定が くだされます。
構造耐震指標 1次診断 Iso=0.8以上
2・3次診断 Iso=0.6以上
想定地震にたいし判定しているため構造耐震指標値以上でも「地震の震動及び衝撃対して倒壊し、 又は崩壊する危険性が低い」と判定されます。
4.耐震診断後の補強
想定地震にたいして「危険性が高い」と判定された時は、補強を行いますが 2次、3次診断の計算で耐力の小さい箇所、脆性破壊(もろい壊れ方)すると考えられる箇所を重点とし補強計画を立案してきます。補強方法については、耐震壁の増設、耐震ブレース増設、柱の鉄板巻き、炭素繊維巻き、等の方法が有り建物の使い勝手により最善の方法を検討していきます。
5.補強後の耐震診断
「危険性が低い」との耐震性能を目標としますがホテル、旅館の場合建物の使い勝手により
不可能なケースもあり所有者との話し合いにより補強後の耐震性能を提示し最低崩壊しない
(建物は変形をするが、避難時間の確保)補強を検討します。
耐震診断を行い建物の耐震性能が低く、危険度が高いと判定された時、耐震補強を行うこととなります。ではどんな方法が有るでしょうか。
建物の耐震性能は、耐力のみで判断されるのではなく、靭性(ねばり-変形能力)と共に評価されており、診断の結果により補強方法もことなります。
診断結果の分類
1.壁の多い建物 耐力はあるが靭性不足
2.壁が少ない建物 靭性はあるが耐力不足
3.1と2の中間の建物 耐力、靭性共に不足
4.下階で壁の抜けている建物 極度に力が集中する 耐力、靭性共に不足(ピロティー)
診断の結果判断された現状の建物の耐震性能、補強後の耐震性能の目標により補強方法も異なります。
上記建物に対する補強方法
a 耐力はあるが靭性不足柱の鉄板巻補強
柱の炭素繊維巻補強
耐震スリットの配置靭性を増し耐震性能を上げる(多少柱が太るが、建築空間に制約が少ない)
b 靭性はあるが耐力不足耐震壁の増設
ブレース壁の増設
袖壁の増設耐力を増し耐震性能を上げる。(建築空間に制約ができる。)
バットレス、骨組みの増設
重量低減(防水保護コンクリートの撤去、最上階の解体等)
c 免震装置、制震装置による補強
特殊な方法ですが免震装置、制震装置をいれることにより地震の力を
逃がしてしまい現状の構造体に多少の補強で耐震性能を満足させる方法です。
(古く重要な建物、美術館等に使われています。)
昭和47年以前の建物では、基本的な耐力不足、靭性の不足の両方が
見られることが多く大規模な補強計画となります。
又、昭和50年以後の建物では、靭性不足程度で比較的軽微な補強ですんでいます。
実際の補強では、上記の方法を複合した補強となりますが、
営業上の問題、空間の使い勝手、経済性、施工性等を考慮し最適な補強工法、
耐震性能へのの効果を上げる方法を提案していきますので
気になることが有りましたら相談ください。 |